こんにちは!ライフウェルスタッフです。
近年の医療技術の進歩に伴い、生活するうえで医療的ケアが必要な「医療的ケア児」が年々増加傾向にあります。
一方で、2021年に医療的ケア児支援法が施行されたことで環境は変わりつつあるものの、まだまだ医療的ケア児やその家族に対するサポート体制が十分とはいえません。
今回は、医療的ケア児の現状を振り返りつつ、家族を支える施策やライフウェルの取り組みについても解説していきます。
医療的ケア児とは
厚生労働省によると医療的ケア児を、以下のように定義しています。
“医学の進歩を背景として、NICU(新生児特定集中治療室)等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のこと”
医療的ケアの具体例としては、「血液中の酸素飽和度と脈拍数の測定」「自宅で酸素吸入を行う在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)」「食事のためのチューブを胃に通す経管栄養」などが挙げられます。
医療的ケア児が生きていくためには、こうした医療的ケアが日々必要になるため、家族をはじめ、周囲のサポートが不可欠になります。
医療的ケア児の現状
少子化問題が叫ばれて久しい現代の日本ですが、医療的ケア児人口は増え続けていて、2005年(平成17年)時点では9,987人、2021年(令和3年)には20,180人と、この15年ほどで2倍以上に増加しています。
では、なぜ子どもの数が少なくなっているにも関わらず、医療的ケア児の人口が増え続けているのでしょうか?
その理由は近年の新生児医療技術の向上にあります。これまでは、妊娠中や出生時のトラブルによって疾患や障害を持つ子どもの場合、出生時や出生後しばらくして亡くなってしまうケースも少なくありませんでした。
それが近年の新生児医療技術の発達によって、以前は助けられなかった赤ちゃんの命を救うことができるようになったのです。(出典:厚生労働省)
医療的ケア児支援法とは
多くの子どもの命を救えるようになったのは喜ばしいことですが、一方で日常的にサポートが必要な医療的ケア児に対し、支援制度が不十分だったこともあり、家族は体力的にも精神的にも大きな負担を強いられていました。
こうした課題を解消し、医療的ケア児の健全な保育と家族へ支援、負担軽減することを目的に、2021年「医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)」が成立、施行されました。
医療的ケア児支援法の基本理念は以下の通りです。
- 医療的ケア児及びその家族の生活を社会全体で支援しなければならない。
- 医療的ケアの有無に関わらず、子どもたちが共に教育を受けられるよう最大限に配慮しつつ、個々の状況に応じて、関係機関・民間団体が密に連携し、医療・保健・福祉・教育・労働について切れ目なく支援が行わなければならない。
- 医療的ケア者(18歳以上)も適切な保健医療・福祉サービスを受けながら日常生活や社会生活を送ることができるように支援を行わなければならない。
- 住んでいる地域に関係なく、医療的ケア児とその家族が適切な支援を受けられるようにする。
医療的ケア児とその家族を支える主な取り組み
医療的ケア児支援法はまだ施行されて間もないこともあり、まだまだ多くの課題を残しているものの、今後徐々に社会に認知され、支援体制がより強化されていくことが期待されています。
ここからは、医療的ケアが必要なこどもとその家族に対して、実際にどのようなサポートが行われているのか、具体例をみていきましょう。
通所支援
医療的ケア児とその家族が利用できる支援の一つに、ライフウェルのような児童発達支援・放課後等デイサービスといった「通所支援」があります。
「児童発達支援」は、0〜6歳の未就学を対象に、日常生活における基本的な動作の指導や集団生活に適応するための訓練を行い、6~18歳の就学児童が通う「放課後等デイサービス」では、主に生活能力向上や社会との交流促進を目的に訓練を行います。
また、手足や体幹に不自由があり、医学的管理下での支援が必要と認められた児童を対象とした「医療型児童発達支援」などもあります。
訪問支援
医療的ケア児の多くは常にサポートを必要としており、家族の方は一日のほとんどの時間を医療的ケアに割いている状況です。
家族だけでの介護となると肉体的・精神的に大変な負担が伴いますし、働きに出るどころか、なかなか休む時間すら確保することができません。
こうした医療的ケア児の自宅生活や家族をサポートするため、もっとも需要の高い入浴を筆頭に、食事や通院の介助を行う「居宅介護」、訪問看護師による支援を受けられる「訪問看護」、「訪問診察」などのサービスがあります。
相談支援
障がい福祉サービス・障がい児通所支援を利用するためには、「サービス等利用計画案」もしくは「障がい児支援利用計画」を作成する必要があります。
特に医療的ケア児の相談支援計画に関しては、利用児と家族の生活状況に応じた計画策定が重要です。
医療的ケア児支援法の施行により、各都道府県に医療的ケア児支援センターの設置が義務付けられたことで、わからないことは専門的知識を持つプロに相談できる環境が整いつつあります。
クラウドソーシング
先ほども触れましたが、医療的ケア児の家族は一時的な休息だけでなく、働く機会を得ることすら難しい方もいらっしゃいます。
医療的ケア児の家族が社会的に孤立しないよう、クラウドソーシングを活用して時間や場所の制約を受けないかつ、しっかり報酬を得られる仕組み作りを目指しています。
ライフウェルが取り組む家族支援を紹介
最後にライフウェルが取り組む家族支援を紹介します。
茶話会
医療的ケア児の保護者同士は、出会いや触れ合う機会が少ないという現状があります。そこで、ライフウェルが主導となり「茶話会」という形で保護者同士の交流会を設けています。
基本は雑談がメインの堅苦しくない雰囲気で、皆さんリラックスして話しながら交流を深めたり、それぞれ情報交換を行っています。
茶話会の中では、小学生の医療的ケア児の保護者と未就学児の保護者が一緒に話せる場も設けています。
例えば、車の福祉車両の選び方や放課後等デイサービスの選び方、学校の選び方など、あらゆることを経験している先輩保護者から話を聞けるので、参加者の皆さんからもありがたいという声をたくさんいただいています。
福祉車両の展示会
医療的ケアが必要なお子さんは、バギー型の車椅子や、リフトやスロープ付きの車両が必要な場合がありますが、そういったものは車の販売店を訪れてもなかなか置いてありません。
そこでディーラーの方と連携し、福祉車両を数台展示する「福祉車両の展示会」を実施しています。
直接販売は行なっておらず、情報提供の場としています。保護者にとっては、福祉車両を見て自分の子どもにどういったものがいいかを考える良い機会になっています。
福祉用具の勉強会
小さいお子さんの保護者ほど福祉用具に関する情報を得られないことが多いため、福祉車両だけでなく、自宅で使う椅子や福祉用具に関しても、勉強会を開催しています。業者さんと連携し、用具についての説明や使い方を知ることができます。
実際に試乗や試しに使うこともできますし、使える制度や金額など細かい情報も聞くことができるので、保護者からも好評です。
遠足/イベントの同伴
ライフウェルでは、保護者の皆さんがお子さんと一緒に気分転換・リフレッシュができるよう、定期的に遠足やイベントを実施しています。
家族だけでは難しいことも関わることで、いろいろな場所へ行ったり参加することができますし、保護者の方同士が交流できる場所にもなるため、こうしたイベントの企画=支援につながると考えています。
最近ですと、熊本市動植物園やアミュプラザくまもとなどへ遠足に行きました。その様子も紹介していますので、ぜひご覧ください。
「JR」に乗って「アミュプラザくまもと」「スノーピーク」に行きました!
子どもたちの就学支援
ライフウェルでは、児童発達支援事業所に通うお子さんたちが小学校へ上がるときの就学支援も行っています。
支援学校に進むのか、普通学校に入学し支援教室で過ごすのか、選択肢は複数あるものの、判断材料がなかったり、そもそも仕組みや制度がわからない保護者もいらっしゃいます。
そういった皆さんの不安を少しでも解消できるよう、学校選びのポイントを保護者に伝えたり、実際にお子さんが支援学校や普通学校へ入学する際に、関係機関や関係者と連携するなどのサポートを行っています。
まとめ
今回は、医療的ケア児とその家族を支えるための支援について解説してきました。
まだまだサポート体制が十分とはいえないものの、医療的ケア児支援法の施行により、これから医療的ケア児や家族が安心して心地よく暮らすための支援や取り組みが広がっていくことでしょう。
私たちライフウェルでも今回紹介した家族支援はもちろん、日々工夫を凝らしながらサポートを続けていきたいと考えています。
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