近年、重症心身障がい児のお子さんが生まれる割合は年々高まっています。その背景には、医療技術の向上により、これまでであれば救えなかった命を救えるようになったことも考えられるでしょう。
一方で、無事生まれてきたお子さんたちをケアする体制は、まだまだ追いついていません。
このような状況を受け、ライフウェルでも、重症心身障がい児のお子さんに対するケアに力を入れています。
とはいえ、重症心身障がい児についてや彼らへの支援サービスについては、まだまだ知られていないというのが現状です。
そこで、今回はライフウェル二本木事業所にて、作業療法士として勤務されている平野さんに、重症心身障がい児へのケアについて詳しくお聞きしました!
——重症心身障がい児ケアにおける、セラピストの仕事について教えてください。
ライフウェルの場合、セラピストとしての仕事と療育者としての仕事があります。それぞれの仕事内容について紹介します。
セラピストの仕事は、事業所の運営理念としても掲げてあるように、“一人一人がその人らしくイキイキと生活していけるためのサポートをする”。それが業務の目的だと思っています。
作業療法士や理学療法士は病院をはじめ、いろいろな施設にいますが、ライフウェルの場合は地域に近い、利用者さんたちの生活に近い場所にいるセラピストというところが特徴です。
業務内容は主に、一緒に歩いたり、ストレッチなどの訓練や運動面の評価、あとは日々の姿勢の管理を細かくできるようにしています。
姿勢の管理というのは、お子さんが自分の身体を適切に使えるよう姿勢をサポートします。
例えば、病院や施設にあるバギーや車椅子、歩行のための装具などを使用しているお子さんが、日常的に正しく使えていなかったり、サイズが合わなかったりすることがあります。また、寝返りが打てず、長時間仰向けの姿勢で過ごしているお子さんもいます。
そのようなお子さんたちは、姿勢を保つためのケアをしないと、身体が変形していってしまいます。肺や胸郭が変形していくと、だんだん呼吸も浅くなり、呼吸障害にもつながってしまうのです。
そのような状態にならないために、ストレッチや訓練などを行います。また、それらのケアだけでは予防しきれない部分もあるので、身体の成長を促したり、変形の予防にもつながるように、テーブルや椅子の座面とかを体の状況に合わせて手作りしたり、本人が座りやすくて作業がしやすい姿勢をとれるように管理をしています。
さらに、ご家族の方へのサポートも行います。ご家族の方から福祉用具の使い方とか、お風呂の介助のコツなどのご相談を聞くこともあるので、ご家族の介助が少しでもスムーズになるよう、福祉用具のご提案や、日常生活の中の介助の方法など、あらゆる情報提供をしております。
療育者の仕事は、お子さんの基本的な生活支援を行います。オムツの交換や食事、トイレ、移動や送迎の介助、送迎時の運転など。日々の報告・連絡業務などもあります。
セラピストと療育者、どちらも大切なのは、まずお子さんと楽しく遊ぶことですね。
お子さんとのコミュニケーションの深さによって、ケアの質も大きく変わります。その瞬間、お子さんがどのような気持ちなのか、何を言いたいのか、あらゆるアンテナを張って受け取る必要があります。
——病院と児童発達支援所で、仕事内容に違いはありますか?
まず、利用頻度の違いがありますね。病院の場合、月に1回くらいのペースで通院するのに対し、ライフウェルのような地域密着型の児童発達支援所は、週3回くらい利用される方が多いので、よりお子さんや保護者の方と近い距離感で接することになります。
もうひとつは、医師の有無。病院は医師が在籍しているので、医療的な支援は充実していると思います。児童発達支援所には医師は在籍していないので、お子さんのケアに対する方針は、病院が決めたものに従います。その方針の中の日々の管理などは私たちができることかなと思います。
病院も児童発達支援所も、どちらも大切な役割があります。お互いが協力し合って連携していくことが、お子さんのためにもなると考えます。
病院のセラピストさんとの連携というと、ひとつ印象的だったエピソードがあります。
呼吸状態があまりよくないお子さんがいらして、学校へお迎えに行ったときに、酸素が低下してしまったことがあったんですね。このままだと危険だと判断し、保護者の方に許可を得てかかりつけの病院のセラピストさんに連絡をしたんです。
その際のスムーズな連携があったおかげで、お子さんの体調も安定し、ほっとしました。
特殊なケースではありますが、こうやって病院のセラピストさんと地域のセラピストで連携が取れると、お子さんや保護者の方にとっても安心して日々の生活を過ごしていただける環境が作れるのではないかと感じましたね。
——重症心身障がい児を担当するセラピストとして、大切なことは何ですか?
施設の方針によってさまざまあると思いますが、私は、地域の療育施設にいるセラピストというのが自分の立ち居位置だと思っていて、その中で求められる役割は何かを常に意識しています。
あとは、言葉を話せないお子さんもすごく多いので、嬉しい時はどんな時だろう?、この表情をする時はどんな気持ちなんだろう?など、お子さんたちの気持ちや、たくさんの表情を見逃さないように常に心がけてます。
先ほど伝えた、セラピスト・療育者どちらの仕事にも求められる話につながると思います。
ライフウェルの場合、児童発達支援所と放課後等デイサービスの両方を運営しているため、お子さんと長い年月を一緒に過ごすことが多いです。そのため、子どもたちの成長によっていろいろな表情が見られるようになります。
長く一緒にいるお子さんでも、ふとしたときに見たことない良い表情をしていたりするので、まだこの子の見ていない表情っていっぱいあるのだろうな、と感じることが日々あります。
——重症心身障がい児を担当するセラピストとして、求められるスキルはありますか?
知識はいろいろ必要ですが、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士以外に特別に必要な資格はありません。
強いていえば、日々、お子さんについて理解しようとする姿勢や、知りたいという気持ちが大切ではないでしょうか。
私自身、働きながら学ばせてもらったことはたくさんあります。子どもたちのことを理解したいという思いをきっかけに、研修会に参加したり、わからないことは先輩に聞いたりして知識やスキルを身につけていきました。
——最後に、小児分野で働くことに興味がある方へメッセージをお願いします。
ライフウェルの基本理念に共感しているので、引用させていただきます。
私たちは、“子どもたちとご家族が将来の生活を思い描けるよう”に、一緒にサポートしていきます。この理念に賛同していただける方、大歓迎です。
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