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小児分野における作業療法士や理学療法士の働き方とは?児童福祉施設で働くスタッフへインタビュー!

近年、児童福祉施設における、作業療法士や理学療法士の需要が急増しています。
医療は日々進歩を続けており、小児分野も同様に取り巻く環境が変わっています。障がいのあるお子さんが自分らしく生きられる世の中になっていく一方で、ケアにあたる人員が不足しているという現状があります。

作業療法士や理学療法士の仕事というと、一般的には病院での勤務を想定している方も多く、みなさんにとって、小児分野で働くことがイメージしづらいという意見もあるでしょう。

そこで、今回は児童発達支援所・放課後等デイサービスにて、作業療法士として勤務経験のある、児童発達支援事業所 管理責任者の伊集院さんにお話を聞いてみました。

——小児分野における作業療法士・理学療法士の現状を教えてください。

まずは私たちのような児童発達支援事業所、または放課後等デイサービス、そして病院の小児科が主な勤務先だと思います。最近では、居宅介護としてご自宅への訪問や、保育所等訪問支援といって学校へ出向いてアプローチ・援助を行う形も増えている印象です。

仕事内容は医療的ケア児がメインになるか、発達支援分野になるかによっても大きく変わると思います。
特に医療的ケア児向けの地域設備は、まだ整備が行き届いていない分、セラピストが求められています。医療の発達により命をつなぐことができた子ども達が、退院したあとに行き先がない、選択肢が少ないというケースが少なくありません。

地域における課題がありながらも、ここ数年で小児分野は急成長しており、セラピストのニーズは年々高まっていると感じています。

——児童発達支援事業所・放課後等デイサービス「カラーズ」の業務内容を教えてください。

「カラーズ」は、重症心身障がい児(医療的ケア児)を中心としたサービスを提供しています。
午前は児童発達支援事業所として、未就学児の重症心身障がい・肢体不自由児のお子様と保護者を対象とした内容です。午後は放課後等デイサービスとして、学校終了後に通所される児童の方々を対象にしています。

・午前(児童発達支援事業所)の流れ
朝の会〜活動〜お昼ご飯・お昼寝〜活動〜帰りの会

・午後(放課後等デイサービス)の流れ
送迎〜ストレッチやマッサージ、入浴介助など

重症心身障がい児(医療的ケア児)の中でも、寝たきりのお子様に関してはケアをメインにストレッチなど、活動できるお子様には歩く練習や膝立ち練習など、「今その子が必要としていること」を見極めて提供しています。
当事業所は担当制ではなく、当日に「送迎担当」や「お風呂担当」が決まるので、情報共有が特に重要です。セラピスト間での密な情報共有を行うことで、一人ひとりの状態を把握しています。共有した情報を踏まえた上で、活動の促しや「送迎」や「お風呂」などの援助・介助を行なうときも生活の質の向上を目指して、セラピストの視点を大切にしてかかわることを大切にしています。

——病院勤務を経験したからこそ気づいたこと、感じたことを教えてください。

私は病院での成人・高齢者向けのリハビリテーションから、「カラーズ」へ転職したという経歴があります。
最初は違いに戸惑いましたが、病院勤務を経たからこそみえる、地域の小児分野の良さを感じています。私が思う児童福祉の事業所の特徴は、主に次の3点です。

01.ゆるやかな時間の流れ

事業所では、時間を区切らずに1日のお預かり時間全体で(治療)アプローチ・援助を行なっています。そのため「訓練時間」というよりは、一緒に過ごす時間を使って「遊びながら体の使い方を練習する」という方が近いかもしれません。
また対象者は子どもなので、気分や調子に波があることも多くあります。お預かり時間の中で「あ、今だ!」というタイミングを見極めて関わることができるのが、事業所の良いところだと感じています。

02.「遊び」を訓練練習に

事業所では、病院にあるような訓練道具や器具はあまり使用しません。その代わりに机や椅子、棚などの日常生活にあるものを使って、ご自宅の生活に沿った練習を行なっています。そのため、人によっては「これって練習なの?」「ただ遊んでいるだけでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし私たちはむしろ、子どもたちには目一杯遊んでもらうことを大切にしています。子どもは遊びながら体の使い方を覚えていくものですから。
先日は事業所内で「餅つき」を実施しました。初めて杵と臼を見た子どもたちに「ペッタンして」というと「何これ!」と目を輝かせてくれました。障害を持つお子様に色々な経験を提供することも、私たちの仕事だと思っています。

03.集団を活かす

事業所ではマンツーマンではなく、集団を活かした支援を行なっています。特徴は「子ども間」を上手く利用すること。例えば物の使い方や貸し借りの練習では、「ほら、あの子を見てごらん」と言って、年上の子どもを参考に覚えてもらっています。「あんな風に使ってみたら良いんじゃない」という声かけから生まれる集団を活かした支援は、事業所ならではの良さだと思います。

——小児分野で働く魅力を教えてください。

魅力はたくさんあるのですが、大きく分けると「気持ちが若返る」ということと、「保護者の方と一緒にお子様の成長を楽しめる」ということでしょうか。
私よりずっと年下の子どもたちと過ごしていると、自分自身も若々しくいられる気がします(笑)
あとはやはり、お子様の成長を見守っていけること。喋ることができなかったお子様が可愛く喋りだしたり、そのうち少し茶目っけが出てきたり。保護者の方と一緒に子育てを楽しんでいるような感覚です。お子様と長く関わっているからこそ、保護者の方と「去年は○○だったのに、今年は○○ですね」と経過を共有できることが大きな魅力です。保護者の方の気持ちも理解しながら、日々コミュニケーションをとっています。

——小児分野で働くために必要なスキルはありますか?

私が思う必要な条件はひとつだけです。それは「子どもが好き」ということ。その素質がないと仕事は続きませんし、そもそも子どもが近づいてきません。
子どもは賢いので、大人が壁を作ると近寄らないんです。そのため「子どもが好き」という方なら、小児経験がなくてもやっていけるのではないでしょうか。

また「スキル」というのも、最初は特に必要ないと思います。逆にいうと、子どもから学ぶことの方が多いくらいです。私たちも、日々子どもたちから多くのことを教えてもらっています。子どもから学んだことを別の子どもに還元していくのが、この仕事の醍醐味。楽しみながら働いているうちに、スキルは自然と身についていくと思います。

——小児分野で働くことに興味がある方へメッセージをお願いします。

「子どもが大好き」という方は、ぜひ一緒に働きましょう!
実は学生時代の私は、「小児分野って難しそう」と思っていたんです。小児に関わる授業時間が少なかったことや、保護者の方との関わりからそのようなイメージを抱いていたのだと思います。学校で小児実習ができる機会も少ないので、具体的なイメージを持つことができませんでした。

しかし実際に働いてみると、小児だけが突出してハードルが高いわけではなく、成人・高齢者との大きな違いはないと感じています。
学校の先生たちにも「小児ってこんな楽しいんだよ」というのを伝えていただきたいですし、「子どもが好き」という方はぜひ足を踏み入れてほしいと思っています。

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