ライフウェルでは、療育の現場で日々大切にしている6つの視点があります。Function(機能)、Family(家族)、Fitness(健康)、Fun(楽しみ)、Friends(友だち)、Future(未来)──頭文字がすべて「F」で始まることから、専門的には「F-Words」とも呼ばれている、児童発達支援における大切な考え方です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、この6つの視点はカナダの研究機関で生まれ、いまや世界中の療育・発達支援の現場で広く使われている考え方です。
お子さんを「できないこと」ではなく「できること」「これからの可能性」から見つめ直す視点として、保護者の方にも、療育に携わる専門職にも、たくさんのヒントを与えてくれます。
この記事では、6つの視点の背景とそれぞれの意味、そしてライフウェルが日々の支援にどう活かしているかをご紹介します。
6つの視点(F-Words)とは
この6つの視点は、もともとカナダの障がいのある子どもたちの研究機関で生まれた「F-Words」と呼ばれる考え方が土台になっています。
提唱したのは、カナダ・マクマスター大学にある「CanChild Centre for Childhood Disability Research」のDr. Peter RosenbaumとDr. Jan Willem Gorter。
2011年に発表された論文で、Function(機能)、Family(家族)、Fitness(健康)、Fun(楽しみ)、Friends(友だち)、Future(未来)の6つの英単語の頭文字「F」で構成され、児童発達支援における大切な視点としてまとめられました。
論文のタイトルは “The ‘F-words’ in Childhood Disability: I swear this is how we should think!”(「私たちはこう考えるべきだと、強く信じている」)というユニークなもの。20年以上にわたるCanChildの研究と、世界中の専門家との議論から生まれた、子どもの発達を支えるための新しい考え方です。
提唱以来、6つの視点は世界中の療育・教育・医療の現場で広く採用され、2022年にはさらに発展した論文も発表されています。
WHOの国際生活機能分類(ICF)が土台
6つの視点の背景には、WHO(世界保健機関)が2001年に発表した「国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)」という枠組みがあります。
ICFは、それまでの「障がい=治療すべき病気」という見方から、「人の生活や活動、社会参加を多面的にとらえる」という発想への大きな転換をもたらしました。6つの視点(F-Words)は、このICFの考え方を、保護者の方や支援者がより親しみやすい形で日常に落とし込めるよう整理したものです。
つまりこの考え方は、思いつきや精神論ではなく、世界的な研究と理論に裏打ちされた、信頼できる視点なのです。
6つの視点が示すもの
ここからは、6つの視点それぞれの意味と、保護者の方やお子さんの生活にどうつながっているかをご紹介します。

出典:CanChild “F-words in Childhood Disability”
1. Function(機能):「何をするか」を大切にする
最初の視点は「Function(機能)」。お子さんが何をするか、何ができるかに目を向ける視点です。
ここで大切にされているのは、「どうやってするか」は重要ではない、ということです。たとえば、靴を履くという動作ひとつとっても、片手で履く子もいれば、座って履く子もいれば、補助具を使う子もいます。
「みんなと同じ方法で履けるか」ではなく、「自分なりの方法でできているか」を見る。それがFunctionの考え方です。
CanChildの公式説明でも “Function refers to what people do — how things are done is not what is important”(機能とは、人が何をするかであって、どのようにするかは重要ではない)と明記されています。子どもにとっての「play(遊ぶこと)」も、立派なFunctionのひとつです。
2. Family(家族):子どもにとって最も大切な「環境」
2つ目の視点は「Family(家族)」。お子さんを取り巻く最も大切な「環境」として、家族の存在が位置づけられています。
療育はお子さん一人だけの取り組みではありません。お子さんが日々過ごす時間の大半を共にする家族の関わり方、家族自身の心身の健やかさ、家族と支援者との連携。そのすべてが、お子さんの育ちに大きく影響します。
ライフウェルでも、お子さん本人への支援と同じくらい、ご家族への支援を大切にしています。年に1回の福祉用具説明会の開催や、ご自宅でできる活動の提案など、ご家族と一緒に考える機会を設けているのもそのためです。
具体的な取り組みについては、療育の内容や効果について詳しく解説した記事でもご紹介しています。
3. Fitness(健康):心と体の両方の健やかさ
3つ目の視点は「Fitness(健康)」。ここでの健康は、体の健康だけでなく、心の健康も含む広い意味でとらえられています。
障がいのあるお子さんも、そうでないお子さんと同じように、体を動かす機会や心が満たされる時間が必要です。
Fitnessの視点は、「障がいがあるから運動はできない」と決めつけるのではなく、その子に合った形で体と心を健やかに保つ方法を一緒に見つけていこう、というメッセージを含んでいます。
ライフウェルでは、お子さん一人ひとりの身体機能を評価したうえで、姿勢の支援やリハビリテーション、季節のイベントなど、心と体の両面に働きかける活動を行っています。
また、お子さんが健康な状態を維持し、療育の場や地域の保育園といった社会的な場に継続して参加できるよう、適切な医療的ケアやリハビリテーションなどの介入も実施しています。
4. Fun(楽しみ):子どもの「仕事」は遊ぶこと
4つ目の視点は「Fun(楽しみ)」。これは6つの視点のなかでも、特に大切にされているもののひとつです。
CanChildでは “For children, play is their work”(子どもにとって、遊ぶことは仕事である)と表現されています。大人にとっての仕事と同じくらい、子どもにとって遊びや楽しみは真剣で意味のある活動です。
療育は、苦手なことを練習する場ではなく、楽しみのなかで自然に力が育っていく場でありたい。
ライフウェルでも、音楽療法やスイッチおもちゃ、季節のイベントなど、お子さんが「楽しい」「もっとやりたい」と感じられる活動を中心に据えています。
Funを大切にすることが、結果的にお子さんの可能性を広げることにつながっていきます。
5. Friends(友だち):社会的なつながりが育つ場
5つ目の視点は「Friends(友だち)」。同年代の仲間との関わりは、お子さんの成長にとってかけがえのないものです。
CanChildのポスターには、子どもの言葉として “Having childhood friends is important. Please give me opportunities to make friends with my peers.”(子ども時代の友だちは大切。仲間と友だちになる機会をください)と書かれています。
ライフウェルの事業所では、お子さん同士がともに活動し、声をかけ合い、ときに笑い合う時間を大切にしています。集団生活が苦手でも、その子のペースで他のお子さんと関わる機会を持てるよう、スタッフがさりげなくサポートしています。
6. Future(未来):今は未来につながっている
最後の視点は「Future(未来)」。これは、6つの視点のなかで最も大きな視野を持ったものです。
療育で大切にしている一つひとつの関わりは、すべて「お子さんの未来」につながっています。今この瞬間の支援だけでなく、5年後・10年後、そして大人になったときに、その子がどう生活しているかを思い描く。
CanChildでは “Future is what life is all about”(未来こそが、人生のすべてだ)と表現されています。
ライフウェルでは0歳から18歳以上までの支援を行っており、長い時間軸でお子さんとご家族に伴走できることを大切にしています。
たとえば、同じ法人のなかには、熊本の生活介護「水彩」や都城の生活介護「カラーズ」など、18歳以上の方が利用する生活介護の事業所があります。
児童発達支援(未就学児)、放課後等デイサービス(就学児)、生活介護(就学後)と、それぞれのライフステージに携わるスタッフが、お子さんや利用者の方それぞれの困りごとや課題を共有することで、ライフステージに合わせた支援、そして先を見越した支援へとつなげています。
「制限」ではなく「できる」に目を向ける

この6つの視点には、共通する大きなメッセージがあります。それは、「子どもの『できないこと』ではなく、『できること』『これからできるようになること』に目を向けよう」ということです。
従来の障がい児支援では、診断名や症状、できないことのリストアップに重点が置かれがちでした。けれどこの6つの視点は、その見方をひっくり返します。
お子さんには、どんな機能(Function)があり、どんな家族(Family)に囲まれ、どんな健康(Fitness)を保ち、何を楽しみ(Fun)、誰と友だち(Friends)になり、どんな未来(Future)に向かっているか。
この問いの立て方ひとつで、見えてくるお子さんの姿はまったく違ってきます。「制限」ばかりに目を向けるのではなく、可能性や願い、未来にスポットを当てた視点。
それがこの考え方が世界中で支持されてきた理由なのではないでしょうか。
ライフウェルが6つの視点を支援に活かしている方法
ライフウェルでは、この6つの視点を、日々の療育のなかで実際に活かしています。
チームで「見落としていないか」を確認する習慣
ライフウェルには、保育士・児童指導員・看護師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士など、さまざまな専門職が在籍しています。
それぞれの視点でお子さんを見ているからこそ、ときに「ある一つの視点だけ」に偏ってしまうことがないとも限りません。
6つの視点は、私たちチームにとって支援の見直しに使えるチェックリストのような役割も果たしています。「機能の支援はできているけれど、楽しみが足りていなかったかもしれない」「家族の声を聞く時間が少なかったかもしれない」。
そんな気づきを、6つに立ち返ることで得られます。
日々の関わりに反映している具体例
たとえば、姿勢保持の支援を行うとき。ただ「正しい姿勢を保つ」ことが目的ではなく、「その姿勢でどんな遊び(Fun)ができるか」「お友だち(Friends)と一緒に活動しやすくなるか」「ご家族(Family)が自宅でも続けやすいか」を考えながら工夫しています。
音楽療法でも、楽器を使うこと(Function)だけでなく、その時間がお子さんにとって楽しい時間(Fun)であり、季節を感じる体験(Future)になっているかを大切にしています。
ライフウェルの考え方や日々の取り組みについては、ライフウェルの思いもあわせてご覧ください。
保護者の方が6つの視点を知っておく意味
この6つの視点は、専門職だけのものではありません。保護者の方こそ、知っておくことに大きな意味があります。
お子さんのことを考えるとき、つい「できないこと」に目が向いてしまうことはないでしょうか。健診の指摘、他のお子さんとの違い、これからの心配。
そんな気持ちになるのは、お子さんを大切に思っているからこそです。
そんなときに、この6つの視点を思い出していただけたらと思います。お子さんには、どんなFunctionがあり、どんなFunを感じていて、どんなFriendsに囲まれているか。
視点を変えるだけで、お子さんの世界がぐっと広く、豊かに見えてくることがあります。
そしてそれは、ご家族自身を励ますことにもつながります。「できないことを補う毎日」ではなく、「できることを一緒に育てていく毎日」へ。
この考え方は、そんな転換を後押ししてくれます。
同じ視点で子どもたちを支えたい仲間へ

ライフウェルでは、この6つの視点に共感し、お子さんやご家族と一緒に育ちを支えていける仲間を募集しています。
療育の現場で大切なのは、技術や経験だけではありません。お子さんの「できること」を見つけ、ご家族の声に耳を傾け、楽しみや友だちや未来を一緒に考える。
そんな視点を持って働ける人と、私たちは出会いたいと思っています。
経験の有無は問いません。保育士・児童指導員・看護師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士などなど、さまざまな専門職が連携しながら働いている職場です。
「この考え方に共感した」という気持ちがあれば、それは大きな一歩になります。
まとめ
今回ご紹介した6つの視点は、海外で生まれた専門的な考え方でありながら、その本質はとてもシンプルです。
お子さんの「できないこと」ではなく「できること」を見つめ、家族や友だちといった環境を大切にし、今だけでなく未来を見据える。こうした視点は、療育に限らず、子どもと関わるすべての場面で活きるものではないでしょうか。
ライフウェルでは、これからもこの6つの視点を支援の柱として、お子さんとご家族の「らしさ」を支え続けていきたいと思っています。
お子さんの発達についてご相談したい方や、ライフウェルの考え方に共感してくださった方は、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
参照元・出典
- Rosenbaum, P., & Gorter, J.W. (2012). The ‘F-words’ in childhood disability: I swear this is how we should think! Child: Care, Health and Development, 38(4), 457-463. DOI: 10.1111/j.1365-2214.2011.01338.x
- Rosenbaum, P. and the CanChild F-words Research Team. (2022). The F-words for child development: functioning, family, fitness, fun, friends, and future. Developmental Medicine & Child Neurology, 64(2), 141-142. DOI: 10.1111/dmcn.15021
- CanChild Centre for Childhood Disability Research, “F-words in Childhood Disability”
- CanChild, “F-words Knowledge Hub”
- World Health Organization (2001). International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF).
- CanChild “The Six F-Words for Childhood Disability Poster”
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