「姿勢」と聞くと、背筋をまっすぐ伸ばすことを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、重症心身障がい児や医療的ケアが必要なお子さんにとっての姿勢保持は、呼吸・食事・遊び・コミュニケーションなど、日常生活すべての土台となるとても大切なケアです。
今回は、姿勢保持がなぜ重要なのかという基本的な知識から、ライフウェルが実践しているオリジナルの姿勢保持具を使った取り組みまで、詳しくご紹介していきます。
姿勢保持とは

姿勢保持とは、お子さんの身体の状態に合わせて、安全で快適な姿勢をとれるようにサポートすることを指します。
仰向け・横向き・うつ伏せ・座位など、さまざまな姿勢の中からその時の目的や活動に合ったものを選択し、クッションや専用の保持具を使って身体を支えていきます。
私たちは普段の生活の中で、立ったり座ったり横になったりと、自然に姿勢を変えながら過ごしています。
しかし、自力で身体を支えたり姿勢を変えたりすることが難しいお子さんの場合、サポートがなければ同じ姿勢のまま長い時間を過ごすことになりかねません。
適切な姿勢保持を行うことで、お子さんの身体にかかる負担を軽減しながら、さまざまな活動に参加できる環境をつくることができます。
ここで大切なのは、姿勢保持は単に「身体を固定する」ということではないという点です。
お子さんがその時に必要な姿勢を快適にとれるように支えること。それこそが本質的な目的といえるでしょう。
なぜ重症心身障害児にとって姿勢保持が大切なのか
重症心身障がい児や医療的ケアが必要なお子さんの多くは、筋緊張の異常や関節の拘縮などにより、自分の力で姿勢を変えたり保ったりすることが困難な状態にあります。姿勢保持が大切とされる理由は多岐にわたりますが、主に次のような点が挙げられます。
呼吸や食事など身体機能への影響
姿勢は呼吸の深さや食事時の飲み込みやすさに大きく関わっています。たとえば、胸部が圧迫された姿勢では肺が十分に広がらず、浅い呼吸が続くことで疲れやすくなったり、痰がうまく出せなくなったりすることがあります。
適切な姿勢をとることで胸郭が広がりやすくなり、呼吸が楽になるほか、食事の際に誤嚥(ごえん)を防ぎやすくなる効果も期待できます。
さらに、消化器系の働きにもよい影響を与えるとされており、内臓への圧迫を減らす姿勢をとることで、消化吸収がスムーズになることもあります。
特に人工呼吸器を使用しているお子さんや、胃ろうでの栄養摂取を行っているお子さんにとって、姿勢の選択は健康状態に直結する場面も少なくありません。日々の姿勢ケアは、生活の質を左右する重要な要素なのです。
変形・拘縮などの二次障害の予防
同じ姿勢のまま長い時間を過ごすと、身体の一部に偏った力がかかり続け、脊柱の側弯や関節の拘縮が進行してしまう可能性があります。
これらは「二次障害」と呼ばれ、一度進行すると改善が難しくなることも珍しくありません。
たとえば、仰向けのみで長時間過ごすことが多いお子さんの場合、重力の影響で股関節が外側に開いたまま固定されたり、背骨が弓なりに後弯したりすることがあります。こうした変形は呼吸機能の低下や褥瘡(じょくそう)のリスクにもつながるため、早い段階からの予防が欠かせません。
ポイント:重症心身障がい児にとっては、「生活の中でいかに多くのバリエーションのある姿勢を、目的に合わせて選択してとることができるか」ということが、活動性を高めたり二次障害を予防していくうえで非常に重要です。乳幼児期から意識的に姿勢のバリエーションを増やしていくことが、将来の健康を守ることにつながります。
視線の安定と活動への参加
姿勢が安定すると、頭部が支えられることで視線が定まり、周囲の人や物に目を向けやすくなります。「見る」ことができる環境が整うと、おもちゃに手を伸ばしたり、周囲の声かけに反応したりといったコミュニケーションのきっかけが生まれやすくなるのです。
また、姿勢が安定することで体幹にかかる余計な緊張がやわらぎ、手足の動きも出やすくなるため、遊びや学習などの活動に参加しやすくなり、お子さんの経験の幅を広げることにもつながります。
精神的な安定とリラックス
筋緊張が高く身体が強ばった状態で過ごしているお子さんは、常に身体的なストレスを感じていることがあります。適切な姿勢保持によって身体が楽になると、筋緊張が和らぎ、表情が穏やかになったり、周囲への興味が増したりする様子が見られることも少なくありません。
姿勢が安定することで、お子さんが「心地よい」と感じられる時間をつくること。こうした時間をつくることもまた、姿勢保持の大切な役割のひとつです。
ご家族の介護負担の軽減
姿勢保持はお子さん本人だけでなく、ご家族への支援にもつながります。安定した姿勢を保てる保持具があれば、抱きっぱなしや付き添いの時間を減らし、ご家族の身体的な負担を軽減することが可能です。
お子さんが安定した状態で過ごせるようになると、保護者の方が少しでも手を離せる時間が生まれ、精神的なゆとりにもつながっていきます。
施設とご家庭で同じ姿勢設定が再現できれば、日常生活の中でのケアの継続性も高まるでしょう。
ライフウェルのオリジナル姿勢保持具とは


ライフウェルでは、「子どもたちが“誰とでも・どんな場所でも”いろいろな姿勢を楽にとってほしい」「目的に合った姿勢の中でたくさんのことを経験してほしい」という思いから、ウレタンフォームを加工して作製したオリジナルの姿勢保持具を活用しています。
ウレタンフォーム製姿勢保持具のメリット
一般的にはタオルやクッションで姿勢をサポートすることも多いですが、ウレタンフォームで作製した姿勢保持具には、次のような利点があります。
- サポート力が高い:タオルやクッションに比べて形が崩れにくく、長時間の使用でも安定した姿勢を保てます
- 再現性が高い:誰が使用しても同じ姿勢設定ができるため、スタッフ間や施設と自宅での一貫したケアが実現できます
- 軽くて持ち運びやすい:施設だけでなく、ご家庭や外出先でも気軽に活用できる軽さが魅力です
- 加工・調整がしやすい:お子さんの成長や状態の変化に合わせて再加工・微調整が行いやすく、長く使い続けることができます
ライフウェルで活用している姿勢保持具の紹介
ここからは、ライフウェルの事業所で実際に活用しているオリジナル姿勢保持具をいくつかご紹介します。
ゴーゴーカー


前傾姿勢がとりやすいクッション(PAC:Prone Assist Cushion)を滑車に乗せた、オリジナルの保持具です。
うつ伏せに近い状態で身体を伸ばしながらリラックスでき、地面を蹴って前に進む経験ができます。
この「自分の力で前に進む」という体験は、移動の第一歩にもつながる貴重な経験といえるでしょう。
うつ伏せクッション


頭や胸の重さをやさしく支え、リラックスできるうつ伏せの姿勢を提供するクッションです。
視界が広がりやすく、ものを見たり手を伸ばして遊んだりしやすくなるのが特徴です。
左右対称性のある姿勢づくりは変形・拘縮の予防にもつながるほか、唾液を口の外に出しやすくなることで、むせの軽減に役立つケースもあります。
その他の活用例


ウレタンフォームを三角にカットし、仰向けや横向きなどの姿勢サポートに活用するケースもあります。
さらに、滑車やソリなどの乗り物に乗る際に使用することで、必要な部分をそっと支えながら安定した姿勢の保持や動きの促しをサポート。
遊びの中で自然にさまざまな姿勢を経験できる、そんな工夫のひとつです。
セラピストによる個別対応

ライフウェルの姿勢保持具は、セラピスト(理学療法士・作業療法士等)が中心となり、お子さん一人ひとりの身体の状態を細かく評価したうえで作製・使用しています。
使用する目的や場面を明確にすることで、「なんとなくクッションを当てる」のではなく、お子さんの生活の質を高めるための姿勢ケアを実現しているのです。
また、ご希望があれば、各利用者の方に合わせた「オーダーメイドの姿勢保持具」の作製にも対応しています。
お子さんの身体の成長や状態の変化に合わせ、継続的に調整を行いながら最適な姿勢環境を整えていきます。
ライフウェルでリハビリに関わるセラピストの詳しいインタビューは、こちらの記事でもご紹介しています。
セラピストの仕事とは?重症心身障がい児ケアや医療的ケアについてインタビュー
まとめ
姿勢保持は、重症心身障がい児にとって呼吸や食事、活動参加、そして二次障害の予防に深く関わる、生活全体を支える大切なケアです。
ライフウェルでは、ウレタンフォームを使ったオリジナルの姿勢保持具を活用し、お子さん一人ひとりに合わせたきめ細やかな姿勢ケアに取り組んでいます。セラピストが専門的な評価を行い、お子さんの目的や場面に応じた姿勢を提供することで、子どもたちがその時に合った姿勢で安心して過ごせる環境づくりを続けています。
姿勢保持具やリハビリの取り組みに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。見学・体験も随時受け付けております。
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