障がい児支援

医療的ケア児の支援とは?取り組みやサービスについて詳しく解説

医療的ケア児とは、日常的に吸引や呼吸器、胃ろうなどの医療的ケアが必要な子どもたちを指します。
厚労省のまとめ(令和3年)では、医療的ケア児は全国で約2万人。
そんな医療的ケア児への支援は手厚いとは言い難く、家族の負担も大きいものでした。
しかし、2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行され、医療的ケア児の支援の輪が広がりつつあります。
今回はそんな「医療的ケア児の支援」について、詳しく解説します。

医療的ケア児支援とは?

医療的ケア児支援とは、家族と医療的ケア児の両方を包括的に支援することを言います。

近年、新生児医療の進歩により、未熟児でも助かることが多くなりました。
その結果、重い障がいを持ちながら生活を続ける「医療的ケア児」も全国で2万人まで増加
一方で、各省庁・地方自治体が担う医療的ケア児の支援は、これまでの法律において「努力義務」となっていました。
結果として、医療的ケア児とその家族が適切な支援を受ける機会が与えられず、家族が24時間365日の医療ケアをしなければいけない状況でした。

そんな状況を打破するため、2021年9月には医療的ケア児支援法が施行。
医療的ケア児支援法は「医療的ケア児が健康な子どもと変わらない生活ができること」「医療的ケア時の家族の離職を防ぐこと」目的とした法律です。

これまで医療的ケア児の支援者は家族が中心のため、ケアを担う家族は24時間子どもの傍を離れることができませんでした。
必然的に離職に追い込まれることがあり、社会的に孤立する家族が少なからずいました
また、医療的ケア児は家族以外と関わる機会がなく、子どもとして当たり前の「他人との関わり」や「学習の機会」が得られない状況でした。

つまり、医療的ケア児支援とは「医療的ケア児支援法」の目的のように、医療的ケア児が必要とする医療行為を提供するだけでなく、家族と子どもの問題を解決も目指す支援を指します。

医療的ケア児支援の取り組み

医療的ケア児とその家族の背景を踏まえて、医療的ケア児支援の新たな取り組みとして、2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行されました。

この「医療的ケア児支援法」におけるポイントは以下の通りです。

  • 各省庁と地方自治体が担う医療的ケア児の支援が「努力義務」から「責務」になった
  • 各都道府県に、医療的ケア児支援センターが設置された
  • 保育園や学校などにも看護師など医療的ケアを行える人員の配置が求められるようになった

「努力義務」から「責務」へ

これまで地方自治体が行う医療的ケア児の支援は「努力義務」とされてきました。
しかし、医療的ケア児支援法が施行されて「責務」となりました。
これは簡単に言うと「医療的ケア児の支援を頑張って下さいね」となっていたものが「支援をしなければなりません」というニュアンスに変わったということ。
これにより、地方自治体に求められる医療的ケア児の支援が、今までよりも強制力のあるものへと変わりました。

医療的ケア児支援センターが設置

今までは、医療的ケア児に関する相談を市役所などに持ちかけても、複数の課をたらい回しにされるということも多かったようです。
しかし、医療的ケア児支援法が施行され、都道府県ごとに医療的ケア児支援センターが設置されました。
医療的ケア児支援センターとは、医療的ケア児の専門課のようなものです。
医療的ケア児に関する困り事があれば、医療的ケア児支援センターから必要な関連機関に繋いでくれます。
これにより、医療的ケア児に関する相談をあちこちにしなくても、ワンストップで相談ができるようになりました。

保育園や学校などに看護師を設置

今まで医療的ケア児が保育園や学校を利用する場合、保護者の付き添いが必要でした。
しかし、医療的ケア児支援法施行後は、看護師や特定行為が可能な保育士の配置が求められるようになりました。
更に、医療的ケア児の受け入れを行うよう補助金などの制度が整えられました。
これにより、一般的な保育園や学校でも医療的ケア児を受け入れる動きが広がり、環境が整えられるようになってきました。

医療的ケア児支援の具体的なサービス

「医療的ケア児支援法」施行に伴い、さまざまな障がい児サービスが拡充しています。
具体的には、知的障がいや発達障がい、身体障がいなどの障がいを持つ子どもたちへのサービスがありますが、今回は医療的ケア児に向けたサービスに注目してご紹介します。

医療型児童発達支援センター

上肢、下肢または体幹の機能の障害がある未就学児を対象としている通所サービス。
似たようなサービスに「児童発達支援センター」がありますが、こちらは知的発達に心配がある子どもをメインとしています。
「児童発達支援センター」と大きく異なる点として、「医療型児童発達支援センター」は生活訓練や日常生活援助に加え、吸引や吸入、呼吸器・胃ろうの管理など医療的ケアの提供があります。

放課後デイサービス

学校に通学している医療的ケア児が対象の通所サービス。
放課後や長期休みにおいて、生活訓練および余暇の提供を行います。
看護師が在籍しているため、子どもの吸引や吸入、胃ろうからの栄養、排便コントロールもしてくれます。
イメージとしては学童保育が近く、スタッフに医療的ケア児の養育に関する相談もできます

居宅訪問型児童発達支援

施設に通って児童発達支援を受けることが難しい場合、家にいながら支援を受ける方法もあります
居宅訪問型児童発達支援では、支援者が自宅へ訪ねて発達支援や余暇の提供を行うサービスです。
対象は、重度の障がいで児童発達支援や放課後等デイサービスの支援が受けられない0〜18歳の子どもです。
「感染に対する免疫がなく外出が難しい」「外の環境が発作につながる」「行動障がいがあり集団生活が難しい」など、通所サービス受けることが難しい子どもに適応されます。

医療型障がい児入所施設

施設に入所して、医療的ケアや日常生活援助が受けられるサービスです。
長期の入所に限らず、ショートステイ(数日の入所)やロングショートステイ(数週間の入所)もあります。
似たようなサービスに「福祉型」障がい児入所施設がありますが、大きく異なる点として「医療型障がい児入所施設」は医療的ケアや治療が提供されるという点が挙げられます。
医療型障がい児入所施設では、生活訓練や日常生活援助だけではなく、吸引や吸入、呼吸器・胃ろうの管理など医療的ケアや疾病の治療の提供がされるので、さまざまな合併症を持つ医療的ケア児にとっては安心できる施設と言えます。

医療的ケア児支援に関する情報

医療ケア児サービスについて、どこへ相談すればいいか分からないというご家族も多いと思いますが、まずは「医療的ケア児支援センター」に相談してください。

医療的ケア児支援センターとは、各都道府県に設置されている医療的ケア児支援に関する相談窓口です。

「ケアのために仕事を辞めなければならない」
「リフレッシュする時間が欲しい」
「緊急の預け先がない」
「医療的ケア児以外の子どもと関わる時間がない」

このような医療的ケア児に関連した家族の悩みも相談ができて、適切な関係機関へ繋いでくれます。

検索サイトなどから「〇〇(お住まいの地域)医療的ケア児支援センター」で検索すると、各地域の医療的ケア児支援センターに関する情報が出てくるので、一度調べてみてはいかがでしょう。

まとめ

今回は「医療的ケア児支援法」を中心に医療的ケア児支援について、解説しました。
医療的ケア児支援法がきっかけとなり、以前よりも医療的ケア児の支援の輪は広がっています。
しかし、まだまだ課題が多いことも事実。
例えば、対象は医療的ケア児の支援は主に19歳までの児童のみということなので、20歳以上になった医療的ケア「者」は対象になりません。
さらに、法律としての制度は充実したものの、看護師不足、社会資源不足などにより実際にサービスを提供することが困難という場合もあります。
2023年4月には、「こども家庭庁」が発足し、これまで厚生労働省、文部科学省、内閣府等で行われていた支援が一元管理されていきます。医療的ケア児もこれまで「障がい福祉」と厚労省にてして扱われていましたが、こども家庭庁で一人の「こども」としての支援が行われて行きます
まだまだ課題はありますが、何よりも医療的ケア児のことを家族だけで抱え込まずに、相談すると言うことが大切です。
まずは「医療的ケア児支援センター」に相談してみてはいかがでしょうか。

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