障がい児支援

脳性麻痺とは?子どもの脳性麻痺はいつわかる?詳しい症状やリハビリについて解説

皆さんは脳性麻痺について知っていますか?
もし自身のお子さんが脳性麻痺であることが分かったら、「この子はどう成長していくのだろうか」と不安に思うことも多くあると思います。

脳性麻痺にも個人差があるため全てが当てはまるわけではありませんが、脳性麻痺の症状や成長について知りたいご家族の方に向けて、脳性麻痺の症状やリハビリについて解説していきます。

脳性麻痺とは


脳性麻痺は、診断名ではありますが、症状や機能障害の程度(重症度)、予後など一言ではまとめられないほど、さまざまな臨床像を示します。そのため、特定の症状を示す病名ではなく、多様な症状からなる症候群を脳性麻痺と呼びます。

国際的な脳性麻痺の定義は以下のようになっています。

脳性麻痺の定義

運動と姿勢の永続的な発達の障害の1つの集まりであり、活動の制限を引き起こすが、それは発生・発達しつつある胎児または乳児の脳に生じた非進行性の障害に起因する。脳性麻痺の運動障害には、感覚、知覚、認知、コミュニケーション、行動、てんかんによるもの、二次的な筋骨格系の問題によるものが付け加わる。
(Workshop in Bethesda 2004)

脳性麻痺の原因や発症時期を確かめることは難しいですが、主な原因と言われているのは、先天性脳奇形、動脈の閉塞(血管障害)、母体感染、分娩児の低酸素、新生児脳症、後天性の脳損傷などです。また、発症リスクを増加させる因子としては、子宮内感染症、早産、多胎などが言われています。

脳性麻痺では主に運動障害が起こる以外に、知能の低下や摂食障害、呼吸機能障害などを併せて引き起こすこともあり、障害の程度やお子さんによって異なる症状があります。

子どもの脳性麻痺はいつ分かる

脳性麻痺は、先天性のものもあれば、後天性のものもあるため発達や身体状況から相談があがり、病院での精査によって診断が確定するケースが多いです。

重度の障害がある場合以外は、乳児期に脳性麻痺であることに気づかれないこともあるため、子どもの発達に応じて診断される場合もあります。
特に首が座らない、寝返りがうてるようにならないといった発達の遅れから病院を受診するケースが多いです。

脳性麻痺の症状


脳性麻痺の症状は主に4つの種類があり、その他に合併する他の症状がある場合があります。

痙直型

脳性麻痺の痙直型は手足などの筋肉にこわばりがあり、張って固くなる痙直が起きる症状です。
筋肉のこわばりは体のさまざまな箇所で起こり、動作がスムーズにできない他にけいれん発作や嚥下困難など重篤な問題を引き起こす可能性があります。

脳性麻痺の中でも痙直型は多いとされ、症状のある腕や足の発育が悪いことから尖足やはさみ足歩行なども見られます。

アテトーゼ型

脳性麻痺のアテトーゼ型では自分の意思と関係なく感情に応じて、手足がうねうねと動いたり、突然体が動く症状などが見られます。

自身で体を制御することが難しいため、言葉をはっきりと話すことが難しい場合も多いです。
また、一般的に知能は正常な場合が多いです。

失調型

脳性麻痺の失調型は体の動きがうまく協調せず、身体のバランスが取りにくいといった症状が特に歩行時に現れます。
筋力の低下や、物に手を伸ばしたときにふるえるような動きなどもみられ、素早く動くことや細かい動作が難しい場合が多いです。

正常な筋緊張と低緊張を繰り返しているため、歩けるようになっても転びやすい点も注意が必要です。

混合型

その他に上記のうち2つ以上の組み合わさる場合もあります。
混合型で最も多いのは、痙直型とアテトーゼ型の組み合わせであり、重い知的障害もみられることがあります。

その他の症状

脳性麻痺は合併する症状が数多くあり、発作を起こすてんかんや精神遅滞などがあります。
身体的には斜視など視覚、聴覚的な障害などもあり、身体的な障害といってもさまざまです。

重篤な症状や二次障害を引き起こすと、摂食嚥下障害や呼吸障害では呼吸器や胃ろうの吸引が必要な場合もあるでしょう。

脳性麻痺の治療

脳性麻痺は後遺症であるため、それ以上に脳に傷がつくことはありません。
完治することは難しいですが、治療やリハビリ、子どもの成長によってできることは増えていきます。

より良い状態で過ごし成長するためには、正しい治療やリハビリを行うことが大切です。

方法としては主に、以下の3つが挙げられます。

  • 運動機能を最大限に引き出し、獲得した機能を維持していくための訓練
  • 将来的に起こりうる二次障害の予防(変形・拘縮、呼吸・循環器障害など)
  • それぞれの家族のライフスタイルに合わせた生活支援(福祉機器の検討や導入、生活動作を行う際の介助方法の提案など)

ライフウェルで行っている取り組み


ライフウェルは主に重症心身障害をお持ちの方を対象とした福祉サービスを提供しています。
事業所の種類としては、児童発達支援事業所(0歳~年長)、放課後等デイサービス(小学1年生~高校3年生)、生活介護(高校卒業後~)がありますが、今回は児童発達支援事業所の例についてご紹介します。

児童発達支援事業所は、脳性麻痺の医療的ケアを行うだけの場所ではなく、子ども達が外界や他の人たちと関わる、一番はじめに社会に入ることができる場所だと考えています。
支援の中で大事にしていることは、利用児・者にとって安心・安全な環境作りと遊びや楽しい活動を通した支援です。

安心・安全な環境作り

こども達にとって、ライフウェルのような発達支援に携わる事業所は、始めて体験する集団活動の場であり、言い換えると初めての社会参加の場となります。また、成人の方にとっても社会との繋がりの場となります。
そのため、利用児・者自身の安心感や居心地の良さ、つまり安心・安全な環境作りが大切です。

ライフウェルでは、経験豊富な看護師やセラピストも常駐しているため、医療的ケアの必要な障害をお持ちの方でも安心して利用できる環境が整っています。

遊びや楽しい活動を通した支援

遊びとは、自分自身とそれ以外の人・物・空間への気づきや繋がりを強める作業です。
子ども達は、遊びを通した経験の中で自らの世界を広げていきます。

運動発達や運動学習においても遊びの中で得られる知覚や認知機能の発達はとても重要です。
また、心の成長や安定にも影響を与えます。楽しい活動においても同じことが言えます。

障害をお持ちの方々は、これらの大切な機会が少なくなってしまう場合があるでしょう。 ライフウェルでは、利用児・者に合わせた遊びや楽しい活動を通した支援を大切にしています。

お子さんの具体的な支援

ライフウェルで行っている取り組みのひとつとして、「姿勢」に対する支援があります。

脳性麻痺を持っているお子さんは、筋緊張のコントロールが難しいことなどから、自力で起き上がることや、座った姿勢を保ち続けることが難しい場合も多く、姿勢のバリエーションが少なくなりがちです。
同一姿勢を取り続けることで、成長するに伴い体の変形が生じる場合や、呼吸機能が低下する場合もあります。

このような先々のリスクについても考慮した上で、セラピストが一人ひとりの発達の状況や身体機能について評価し、小さな頃からさまざまな姿勢が経験できるように関わっています。

例えば、全身の筋緊張が強くぎゅっと手足や体を曲げた状態で、仰向けの姿勢で過ごすことが多いお子さんには、タオルやクッションなどのご家庭でも準備できるものを使用し、胸の下や体の各部分を支えて本人がリラックスした状態で過ごせるように調整することで、うつぶせ位で過ごす経験を積んでいただくといった形です。

また、自分で手を使っていろいろなおもちゃで遊びたい、皆と一緒に制作活動に参加したい時でも、身体が安定しないためにものを見続けることができず、自分の手をうまくコントロールして目的のおもちゃなどに触れることが難しいといったことも多くあります。

そのため、療育で行われるさまざまな活動の際には、その日の活動内容や一人一人のお子さんの体調・状態に合わせて、しっかりと物が見え、手を動かしやすいよう姿勢の調整を行います。

リズムに合わせてダイナミックに体を動かすような活動の際は、抱っこの仕方や身体を支える手の位置を調整します。スライムを手で触って感触を楽しむような活動の場合は、バギーや椅子を使用して姿勢を調整し、本人の意図した動きが発揮しやすいようにサポートを行っています。

実際に、音楽療法にご家族で参加していただいた際に、体に力が入ってしまいやすいお子さんの姿勢をクッションやタオルでサポートを行い、お子さんがバチを握って太鼓を叩けた時、今までできていなかった手を使った遊びができた際は、「この方法なら家でもやってみたいです」との感想を頂いたことがありました。

ご家族の具体的な支援

ご家族の方には活動の様子を共有し、ご自宅でもできる活動の提案を行っています。

また、年に1回、福祉用具の説明会を行っています。身体が成長するにつれて沢山の福祉用具や補装具が必要になる場合があります。それらに関する制度についてのご説明や実際に用具を手に取ってご覧いただき、専門家にご相談いただける機会を設けています。

福祉用具の説明会についてはこちらをご覧ください。

重症心身障がい児向けの福祉用具|熊本で取り扱っている業者もご紹介

まとめ

脳性麻痺は脳神経細胞の損傷による後遺症であり、身体的な麻痺を引き起こします。
脳性麻痺を抱えた子どもを育てることに不安は多いと思いますが、リハビリを通してより良い状態で成長をすることができるでしょう。

症状や不安な点を相談できるのは病院だけではなく、さまざまな施設があるため、家族で抱え込まずにぜひ地域やさまざまな施設を頼ってください。

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