地域のお祭りやイベントは、本来、誰にとっても開かれたものであるはずです。けれど、医療的ケアや障がいの特性があると、人の多さや環境の変化、移動の負担などから、「行きたいけれど、難しいかもしれない」と感じてしまう場面も少なくありません。
ライフウェルでは、そうした現状をふまえ、重症心身障がい児のお子さんやご家族の皆さんが、気兼ねなく楽しみながら過ごせるイベントづくりを大切にしてきました。
毎年開催してきた夏祭りも、そのひとつです。そして今年は、より余裕をもって準備を進め、子どもたち一人ひとりのペースを大切にしたいという思いから、時期をずらし「秋祭り」として開催することにしました。
この記事では、今年の秋祭りの様子や展示の工夫、スタッフの想いなどを紹介していきます。
都城カラーズの「秋祭り」について

今年の秋祭りも、都城カラーズの事業所全体を会場として開催しました。参加対象は、利用者のお子さんだけでなく、保護者やご家族も含めた皆さんにお越しいただけます。
例年行ってきた夏祭りは、にぎやかで活気のあるイベントでした。一方で、準備期間や当日の暑さ、時間の制約など、もう少し、ゆっくり向き合える余裕があってもいいのではないか、そんな声もスタッフの間であがっていました。
今年は、そうした振り返りを踏まえ、準備段階から余裕を持ち、当日も落ち着いた雰囲気のなかで楽しめるよう、秋の開催を選びました。
秋祭りを開催する上での思いは変わりません。お子さんたちに季節を感じてもらうこと、そして、お子さんだけが主役のイベントではなく、ご家族全員が同じ空間で、同じ時間を楽しめることを大切にしています。
秋祭り開催までの準備

秋祭りの内容は、担当スタッフを中心に話し合いながら決めていきました。前年の様子や、子どもたちの反応、準備にかかる時間などを振り返り、「今年は何ができそうか」「どんな内容なら楽しめそうか」を一つひとつ検討しています。
今年は、金魚すくい風の当たりくじ、輪投げ、カプセルガチャといったゲームコーナーに加え、地元の駄菓子屋さんにも出店いただきました。
毎年内容が変わるのは、その年、その時の子どもたちやご家族に合った形を探しているからです。
当日の様子や工夫したこと

当日は、午前・午後の二部制とし、参加者が集中しすぎないよう調整しました。会を分けることで、会場全体にゆとりが生まれ、それぞれが自分のペースで楽しめる時間になりました。
今回の秋祭りで特に大切にしたのは、誰かだけが楽しめるお祭りにしないことでした。
バギーを利用しているお子さんが多いことを踏まえ、会場内はできるだけ広い動線を確保し、人が一か所に集中しないよう、人気の出展はあえて分散して配置しています。

金魚すくいでは、高さの異なる容器を複数用意しました。床に降りられないお子さんでも、無理のない姿勢で参加できるようにするためです。
輪投げなどのゲームも、ご家族と一緒に楽しめる形にすることで、「できた」「楽しかった」という体験を共有できるよう工夫しました。
今年は、地元の駄菓子屋さんに出店いただきました。普段から事業所のスタッフが利用していたことがきっかけで生まれた関係です。地域のお店が関わることで、イベントはより身近で、温かいものになります。こうしたつながりも、大切に育ててきたもののひとつです。

お祭りは楽しい反面、刺激が多く、気持ちが高ぶってしまうお子さんもいます。そこで、落ち着いて過ごせる「クーリング部屋」を設けています。
宇宙空間をイメージしたその部屋には、ブラックライトで光る装飾や、子どもたちの写真、作品を配置。親子で一緒に探しながら楽しめる仕掛けも取り入れています。
にぎやかな場所から少し離れて、安心して過ごせる居場所があることも、参加できるお祭りには欠かせない要素だと考えています。
参加者の声

参加された保護者からは、次のような声が寄せられました。
- みんなができる内容で、とてもよかった
- 家族全員で参加できて、安心して楽しめた
- バギーでも無理なく回れたのがありがたかった
- 兄弟も一緒に楽しめて、良い思い出になった
次回の開催に向けて見えてきたこと

秋に開催したことで、しっかりと準備期間を設けることができ、いろいろな工夫を取り入れたお祭りができたと感じています。
今後は、生活介護で制作した作品の展示や販売、スタッフや保護者の得意なことを活かした出店、地域の方々を巻き込んだイベントなど、少しずつ可能性を広げていきたいと考えています。
一度にすべてを実現するのではなく、その年ごとにできる形を探しながら、続いていくイベントとして育てていく予定です。
まとめ
医療的ケアや障がいがあることで、体験の機会が限られてしまうことは少なくありません。けれど、環境や関わり方を工夫することで、できないではなく、できる形を見つけることはできます。
ライフウェルの秋祭りは、そんな思いを一つひとつ積み重ねてきた取り組みです。
これからも、子どもたちが季節を感じ、ご家族で安心して楽しめる時間を、大切に育てていきます。
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