医療的ケア児や重症心身障がい児の支援は、医療や療育といった専門的な関わりだけで完結するものではありません。日々の生活のなかで、お子さんの体調や変化と向き合い、試行錯誤を重ねているのは、ほかでもないご家族です。
ライフウェルでは、医療的ケア児支援において、支援を提供する側と受ける側という関係性にとどまらず、ご家族の生活や思いに寄り添い、ともに考え続ける存在でありたいと考えています。
その考え方は、日々の療育や支援の場だけでなく、保護者同士がつながる時間づくりにも表れています。
今回は都城カラーズで開催された「茶話会」の様子についてご紹介。ライフウェルと保護者との関わり方について知っていただければ幸いです。
茶話会を行う目的

医療的ケアが必要なお子さんを育てるなかで、日常の悩みや迷いが生まれることは決して特別なものではありません。けれど、同じ悩みを抱える保護者の方同士、ゆっくり話す機会は限られており、「誰に話せばいいのかわからない」「自分の気持ちを言葉にしていいのか迷う」、そんな声が聞かれることもあります。
ライフウェルでは、そうした背景を踏まえ、保護者の皆さんが集まり、安心して過ごせる時間をつくりたいと考えてきました。
「茶話会」は、情報や悩みを共有する場でもありますが、それ以上に同じ立場の人と、同じ空間で、同じ時間を過ごすことそのものに意味がある場です。話さなくてもいい。聞いているだけでもいい。そこにいることで、「一人ではない」と感じられる。そんな時間を大切にしています。
今回の茶話会について

今回の茶話会は、都城カラーズで実施しました。今回のテーマは、日常生活に欠かせないバギーの使い方や工夫について。バギーを使用している重症心身障がい児の保護者を対象にお声がけをし、お子さんの年齢の制限は設けず開催しました。
当日は、ピザを囲みながら、自然と会話が生まれる穏やかな雰囲気のなかで始まりました。場に流れていたのは、緊張感よりも、ほっとする空気。初対面の保護者同士も楽しげに会話をされていました。
バギーについて話す時間では、事前に職員が撮影したバギーの写真をもとに、それぞれのご家庭でどのような工夫をしているのか、どんな点に悩んできたのかを共有していただきました。
バギーの工夫を共有するということ
医療的ケアが必要なお子さんにとって、バギーは単なる移動手段ではなく、日々の生活を支える大切な存在です。一方で、その使い方に正解があるわけではありません。お子さんの身体の状態や成長、生活リズムによって、使いやすさは大きく変わります。
今回の茶話会でも、吸引器のバッグの中身の工夫や、バギー下の荷物の置き方など、それぞれの家庭ならではの経験が語られました。
ライフウェルでは、こうするべきですと伝えることはしていません。これまで積み重ねてきた経験を共有し、その中から、自分の家庭に合うヒントを見つけていただく。そうった関わり方を大切にしています。
当日の流れと、場づくりで大切にしたこと
茶話会は、10時から11時30分までの約1時間半で行いました。職員1名がファシリテーターとして参加し、最初に自己紹介やバギーについて説明する時間を設けた後は、自由な交流の時間としました。
初めて顔を合わせる保護者も多いため、無理に会話を広げるのではなく、自然に言葉が生まれるきっかけを用意することを意識しました。
茶話会の時間中、お子さんは別の職員が通常の療育を行っており、保護者の方には安心して参加していただける環境を整えています。
当日の雰囲気と、保護者の声
自己紹介の時間では、お子さんが生まれてから現在に至るまでの歩みを、一人ひとりが自分の言葉で語ってくださいました。
楽しいことだけでなく、迷いや戸惑い、これまで乗り越えてきた出来事も含めて語られるその時間は、会場全体が静かに耳を傾ける、あたたかな空気に包まれていました。
その後の交流では、自然と会話が広がり、保護者同士が互いの経験にうなずき合う姿が見られました。
参加された保護者からは、次のような声が寄せられています。
- 他の家庭の状況を知ることができ、気持ちが軽くなった
- 同じ立場の人がいるとわかり、安心できた
- スタッフとも話ができ、良い関係につながりそうだと感じた
また、次回はスタッフともより多く交流したい、という声も複数いただきました。
職員にとっての学び
茶話会は、職員にとっても支援を振り返る大切な時間です。
日々の支援のなかでは見えにくい、ご家庭での工夫や思い、積み重ねてきた時間。それを直接聞くことで、支援は提供するものではなく、ご家族とともにつくっていくものだと、改めて実感します。
こうした気づきが、日々の関わりや支援の質につながっていくと、ライフウェルは考えています。
今後の茶話会について

次回の茶話会では、スタッフの参加人数を増やし、スタッフと保護者の交流を中心とした内容を予定しています。あわせて、生活介護についての紹介も行いたいと考えています。
参加者の声や、その場の雰囲気を大切にしながら、無理なく、安心して過ごせる場として、今後も継続していきます。
まとめ
茶話会は、特別なことをする場ではありません。けれど、同じ立場の人と時間を共有し、思いを分かち合うことは、日々の生活を支える大切な力になります。
ライフウェルは、これからも、支援の専門性だけでなく、ご家族の思いや生活に寄り添う場づくりを大切にしていきます。
茶話会がそのひとつとして、誰かの心を少し軽くする時間になればと願っています。
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