お子さまの発達に、問題や不安を感じたことはありますか?
障がいがある、発達に遅れがある、育てにくさを感じる・・・そういった子どもたちと、その家族が対象者となる福祉サービスに「児童発達支援」があります。
児童発達支援は、児童福祉法に基づいた国の制度であること、また需要も高いことから、支援を受けられる場所も徐々に増えてきており、利用がしやすくなってきています。
子どもは、小さければ小さいほど外部環境からの吸収も早く、発達に遅れのあるお子さまもそれは同じです。早い時期から適切な児童発達支援を受けることで、数年後、数十年後の子どもたちの未来が変わることもあります。
現在子どもの発達に困りごとがあるご家族の選択肢の1つとして「児童発達支援」を参考にしていただけたら幸いです。
障がいを持っているお子さまや、発達が気になるお子さまとそのご家族が、集団や社会の中でより生活しやすくなるよう、児童発達支援の活動内容や、ご利用方法などについて紹介していきます。
児童発達支援とは
児童発達支援とは、未就学の障がいのある子ども、またはその可能性のある子どもに対し、子どもそれぞれの障がいや特性、発達、成育環境を踏まえ、さまざまな方面から支援を行う福祉サービスです。
ポイントは、障がいの診断が出ていなくても、児童発達支援の利用ができることです。
かかりつけの小児科など、医師からの意見書は必要になりますが、障害手帳を持っていなくても、サービス対象者となることが特徴です。(利用方法や、必要な手続きについても後程説明していきます。)
次に、児童発達支援の支援内容についてです。
児童発達支援は主に、「発達支援(本人支援)」「家族支援」「地域支援」の3つの柱から成り立ち、障がいのある子どもの課題や、ご家族のニーズから設定したねらいの達成に向け、それに必要な支援を行います。
発達支援(本人支援)
発達支援では、子どもに必要な基礎の力となる、「健康・生活」、「運動・感覚」、「認知・行動」、「言語・コミュニケーション」、「人間関係・社会性」の5つから、個別の課題となる部分を支援します。
具体的な例を紹介します。
- 生活:生活における基本的な動作の指導(例:衣類の着脱、トイレの習慣化)
- 運動・感覚:筋力や五感を養う(例:姿勢保持、感覚過敏軽減)
- 社会性:集団生活への適応訓練(例:模倣、気持ちや感情のコントロール)
発達支援の最大の目標は、障がいのある子どもが、将来の日常生活や社会生活を円滑に営むことができるようにしていくことです。
家族支援
家族支援では、家族が安心・安定した子育てを行うことができるよう、家族のさまざまな負担を軽減していくための物理的・心理的支援を行います。
日々の支援に親子で参加し、家庭での関わり方を学んだり、必要に応じて個別の面談を実施します。
障がいのある子どもを育てる家族が、子どもの障がいを理解し、その特性に配慮した関わりができるようになることを目指します。そのために家族が安定した気持ちで子どもと向き合えることは、子ども本人の発達にも大きく関与します。児童発達支援では、保護者の方の思いを尊重し、共に寄り添いながら、支援を提供していきます。
また、場合によっては、他の障がい福祉サービスの紹介や併用を進め、他関係機関との連携を通し、その子どもにとって一番好ましい支援の提供を検討します。
地域支援
地域支援では、障がいのある子どもが、利用する児童発達支援だけでなく、生活する地域でも適切な支援を受けられることを目的として、保育所や地方自治体などと連携していきます。例えば、保育所でも共通の声掛けやお約束をしていくことで、子どもにとって分かりやすく、発達支援の定着にも繋がります。
このように、児童発達支援は子どもとそのご家族への支援はもちろん、子どもを取り巻くさまざまな環境と連携を図り、共通の支援を行っていくことや、集団の中での育ちが保障されるよう、可能な限りで周りが配慮を心掛けた環境づくりが重要です。
児童発達支援が受けられる場所
児童発達支援は主に、児童発達支援センターと、児童発達支援事業所の2つに分かれます。
児童発達支援センター
地域における児童発達支援の中心となる機関です。地域との連携も強く、専門的な知識・技術を基に、保育所や地域など子どもを取り巻く環境への援助や助言も積極的に行います。
児童発達支援事業所
一般的に児童発達支援センターよりも数が多く、より地域に密着しているため、通いやすい事業所を見つけやすいとされています。事業所によってカラーが大きく異なることがあるのも特徴です。
場所によって、送迎を行っているところ、土日や祝日も開所しているところ、昼食を提供しているところなど、児童発達支援を利用する家族のニーズに合わせ、選択することが可能です。
活動内容、1日の流れ
では、実際に児童発達支援では具体的にどのようなことをしているのでしょうか。活動内容や1日の流れについて説明します。
活動内容
子どもに必要な基礎の力となる、「健康・生活」、「運動・感覚」、「認知・行動」、「言語・コミュニケーション」、「人間関係・社会性」を養うため、一人ひとりに合わせたプログラムを作成し、さまざまな角度からアプローチしていきます。
また、子どもが自発的に「やりたい」と思えるような環境を設定することもとても大切です。
以下に支援の一部を紹介します。
TEEACH(ティーチ)
指示などが、目から入りやすい子は目から、耳から入りやすい子は耳からのように、その子に合った“わかりやすい支援”を提供したり、作業の順番や、道筋を最初に提示する支援内容です。
特に発達障がいを持つ子どもたちは、見通しを立てることや、場面の切り替えが苦手であることが多いため、今日の活動内容を番号で提示したり、終わりの時間を前もって知らせておくことで、安心して活動ができたり、切り替えも少しずつできるようになっていきます。
ABA(応用行動分析)
ある行動を行い、望ましい結果が伴えば、その行動の頻度が高まることを利用した支援です。例えば、“片付けができたから褒められた”のように、良い行動に対し、大人がしっかり承認することで、望ましい行動が増え、できることを増やしていく支援の1つです。
児童発達支援では、「承認すること」をとても大切にしています。子どもは、認められたと感じる経験を多くすることで、大きな自信へと繋がっていきます。
感覚統合
人間が持つ「五感」や、「前庭覚(揺れや傾きなどを感じる部分)」、「固有覚(物を持つときの感覚や力の入れ方)」この全てを養うことで、段階的に姿勢維持や注意力を高めること、さらには人とのコミュニケーションや自己の情緒のコントロールができるようになっていく支援です。
さまざまな素材に触れたり、トランポリン、バランスボールなど運動遊びを通して感覚を養います。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
小集団の中で、簡単なゲームなどに取り組み、人とのコミュニケーションや順番を身に付けていく支援です。
児童発達支援の目的が、障がいを持つ子どもの将来の日常生活や、社会生活を円滑にし、子ども自身の生きづらさ、家族の育てにくさを軽減していくことであることは変わりませんが、具体的な活動内容は、児童発達支援を提供している場所によって異なります。
ただ基盤としては、子どもが自発的・意欲的に活動できるものであることや、「できた」という気持ちを大切に、自己肯定感を高めていくことで、自信に繋げていきます。
できないことだけでなく、できることや得意なことを伸ばしていくことも児童発達支援では着目しています。
児童発達支援で働く職員について
児童発達支援では、子どもに関わるさまざまな専門スタッフが在籍しています。
個々の子どもの支援計画を作成する「児童発達支援管理責任者」、日々の支援に携わる「児童指導員」や「保育士」、「機能訓練員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、発達検査を行う「心理士」、また、医療的ケアが必要な場合は「医師」や「看護師」を配置し、多職種で連携し、多方面から子どもたちとご家族の支援を行います。
1日の流れ(例)
- 通所:検温、体調確認、身支度(靴や鞄、上着などをしまう)、手洗い、トイレ
- 朝の会:朝の挨拶、呼名、日付や天気の確認、今日のスケジュール(プログラム)の確認
- 遊びを通した活動(訓練):運動、机上課題、制作など
- 昼食の準備:手洗い、トイレ
- 昼食(実施していない場所もあります。)
- 帰りの会:帰りの挨拶、身支度をして、順次帰宅
各児童発達支援によって、1時間など短時間で集中したプログラムを行っている場所、保育園や幼稚園のようにお昼をとるなど生活を通した支援が提供される場所などさまざまです。
また、個別の課題に合わせて、個別療育や集団療育、課題の設定も変わっていきます。
対象者について
児童発達支援の対象者は、未就学の障がいのある、またはその可能性のある子どもです。
通所型が一般的ですが、重度の障がいにより外出が困難な子どもたちの居宅を訪問し、支援を提供するケースもあります。
利用方法、必要な手続き
利用方法
児童発達支援を利用するために必要なものは、主に以下の3点です。
- 受給者証:福祉サービスを利用するためのもので、療育手帳とは別のものとなります。
- 障害児支援利用計画:障害児相談支援事業所の障害児相談支援員が作成します。
- 個別支援計画:児童発達支援センターや児童発達支援事業所の児童発達支援管理責任者が作成します。
また、それぞれどのタイミングで手続きを進めていくのか、次にまとめていきます。
必要な手続き
01. お住まいの市区町村の障害児相談窓口に相談する
児童発達支援の利用を決めたら、まず市区町村の障害児相談窓口に、児童発達支援を利用したいことを相談します。福祉サービスの利用や手続きは、市区町村によって多少違いがあるため、お住まいの地方自治体で相談をするのが一番スムーズだと思います。
手続きについて教えてくれるのはもちろん、自宅から通いやすい児童発達支援を紹介してくれたり、利用できる福祉サービスなど、さまざまな情報を得ることもできます。
02. 利用する児童発達支援の場所を決定・「障害児支援利用計画案」を作成してもらう
自宅から通うことのできる児童発達支援などで見学や体験を行い、利用する場所が決定したら、障害児相談支援事業所に「障害児支援利用計画案」を作成してもらいます。
03. 受給者証の申請
受給者証の申請には、障害児利用支援計画案、療育手帳または、医師の意見書(診断書)、世帯所得を証明するもの、などが必要となります。
これらを市区町村の障害児担当窓口に提出し、申請をします。支給決定・受給者証の発行には、数週間~1ヶ月程度かかります。
04. 「障害児利用計画」を作成してもらう・契約、利用開始
受給者証が発行されると、障害児相談支援事業所は、「障害児利用計画」を作成します。
ここでようやく児童発達支援を利用するための3つのものが準備でき、事業所と契約を結び、利用開始となります。
児童発達支援のサービスは、1割の利用負担と、実費負担(昼食が出れば「食費」など)で利用することができ、後の9割は国が負担してくれます。
また、世帯所得によって負担上限が定められています。
- 生活保護受給世帯、市町村民税非課税世帯:0円
- 市町村民税課税世帯(年収が890万円以下の世帯):4,600円
- 上記以外(年収が890万円以上の世帯):37,200円
また、令和元年10月1日から、3歳から5歳までの子どもたちは児童発達支援の利用料金が無償化となりました。
無償化の対象となる期間は、『満3歳になって初めての4月1日から3年間』と決められています。
まとめ
児童発達支援についてのまとめです。
- 児童発達支援とは、障がいのある、またはその可能性のある未就学児と、そのご家族のための福祉サービス。
- 活動内容は、各児童発達支援によってそれぞれだが、生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練など、発達の課題を解決するための支援が提供される。
- 児童発達支援を利用するには、受給者証・障害児支援利用計画・個別支援計画が必要となる。
- 利用料金は世帯収入によっても変わるが、自己負担1割で利用でき、また3歳から5歳の子どもは無料である。
- 児童発達支援の利用方法や、必要な手続きなどは市区町村によって多少異なることがあるため、利用する場合は確認する必要がある。
いかがでしたでしょうか。
児童発達支援について少しでも理解を深めていただき、より身近なものとして考えていただけたら幸いです。
「幼少期」という貴重な時間の中で児童発達支援が多くの方の選択肢の1つとなり、障害を持つ子どもとそのご家族が、今よりも生きやすい社会の実現ができるよう、まずはお気軽にお問い合わせください。