生活介護について検討しているが、事前段階で不明なことも多く困っているという方も多いのではないでしょうか。
利用するにあたってどのような手続きをしたらいいのか、どのような生活の変化があるのか、手続きが難しそうなど、なかなか利用開始までのイメージを掴むのが難しいものでもあります。

生活介護は、国で定められている障害者総合支援法に基づくサービスなので、必要な手続きをクリアすると利用できますが最低限、事前の準備や基礎知識を持っておく必要があるでしょう。
できる限り事前に不明点は解消しておきスムーズに利用できるように今回は、生活介護とはどのようなものなのか基本的な部分について紹介します。

生活介護について

生活介護は、「利用者の自立促進、生活面での改善、身体機能の維持向上」を目的としたサービスです。
対象となる年齢は18歳以上であり、障害を抱えていたり、常に介護を必要としている方に対して日常生活の支援や相談、入浴、排せつ、食事などの支援がおこなわれます。
イメージとして「介護」という名称があるものは高齢の方が利用されるものと思われがちですが、生活介護では10代、20代の方も利用されます。特に年齢で区切っているものではないと理解しておくと良いでしょう。
基本的にはお住いの地域にある生活介護事業所でサービスを受け、ご自宅から日中にサービスを受けるために通っていただくような形が一般的です。
理学療法士や作業療法士が利用者の体や心の健康について機能訓練をしたり、看護職員が医療的ケアをおこなってくれるところもあります。

生活介護で受けられる主なサービス

  • 入浴、排せつ、食事等の身体介助
  • 調理、洗濯、掃除等の家事援助
  • 生活等に関する相談や助言、その他日常生活上の支援
  • 創作的活動や生産活動の機会の提供
  • 身体機能や生活能力の向上のために必要な援助

生活介護の特

単に日常生活の介護を受けられるというものではなく、本人の趣味や好きなことなどをおこなう時間が設けられていることもあり、事業所によっては楽しくサービスを受けられる憩いの場になっているというケースもあります。
また、各事業所によって、スケジュールやサービス内容は異なりますので本人が負荷なく日常的に利用できるところなのか見極めや事前の確認がとても重要です。
担当者がしっかりヒアリングして相談に乗ってくれるかどうかという点も事前に確認しておくと入所後は安心してサービスを利用できることになります。

生活介護とデイサービスとの違い

よく生活介護とデイサービスの違いが分からないというご質問をいただくことがあります。
明確な違いとしては、生活介護は食事・入浴・排泄の手伝いなど日常生活にハンデのある方が対象ですが、デイサービスは比較的自立した高齢者を対象としていて、ご家族の負担軽減を目的としたものとなります。サービスを受ける年齢層の違いもありますが、サービス内容も異なっています。
生活介護は18歳以上からというくくりはあるものの、基本的には年齢では区切っていないというサービスになりますので覚えておくと良いでしょう。

生活介護を利用するメリット

生活介護のメリットは複数ありますが、大きく分けて2つ「ご家族の負担軽減」、「利用者の負担軽減」と分けることができます。日々介護が必要とされている現状に対して、介護をする側受ける側、双方にとって良い点があるというのが特徴です。
生活介護を利用した後にどのような生活になるのか、事前にイメージしておくと安心して利用できるでしょう。

ご家族の負担軽減

まずは、ご家族の日々の負担軽減につながるということです。
ご家庭の状況によっては仕事を辞めてまでお世話をしなければいけないというケースも少なくありません。そうなると経済的にも負担がかかってしまいますが、生活介護のサービスを利用することで経済的な問題解決を図ることができます。
また、送迎をおこなってくれる事業所を選ぶことで、家族で日中は介護のことを気にせずにフルタイムの仕事を再開できたという事例もあります。市町村や事業所の担当者と相談したうえで、本人だけでなく家族の生活スタイルも改善できるということも良い点ですね。
ご家族の負担が減って余裕ができることによって、本人との関係が良好になったという事例も多くあります。

利用者の負担軽減

利用者にとっても日常生活の支援を受けられるだけでなく、抱えている不安を解消したり相談できるというメリットもあります。
これまでは1日を自宅で過ごしていて、自分の好きなことができず性格的にも暗くなってしまっていたというケースもありましたが、生活介護で活動的な生活を送ることで性格が明るくなったという事例もあります。
具体的な活動の事例としては、塗り絵や折り紙、音楽活動、ドライブ、地域行事への参加やボランティア活動などがあり、このような経験ができるのも生活介護ならではの良さです。
また、1日の生活の中に事業所に通うという予定ができることによって、生活そのものが豊かになっていく可能性がありますので、利用者にとっても大きなメリットです。

生活介護の活動内容、1日の流れ

大前提として、生活介護の活動内容や1日の流れは事業所によって異なりますので、詳細な内容を事前に知りたい場合は、必ず確認しておくようにしましょう。特に、送迎可能か?食事介助が可能か?などは確認しておく必要があります。
また、例えば利用者によっては、嚥下が弱い場合に食事をミキサー食にしてくれるか、アレルギーなど個別メニューの提供が可能かなど細かいところまで事前に聞いておくと良いでしょう。

基本的には朝のお迎えで事業所まで移動し、午前中は創作活動やボランティア活動、昼食を取ってからレクリエーションや自由時間が設けられているケースが多いです。その間は入浴、排せつ、食事等の身体介助も受けられます。
活動内容についても、どのようなイベントがあるのか、これまでにどのような活動をおこなっていたのか聞いておくと良いでしょう。不明点があれば事前確認をしておくことをおすすめします。

一般的な1日の流れの例

  • 09:00〜 送迎
  • 10:00〜 始まりの会や挨拶
  • 11:00〜 創作活動やボランティア活動など
  • 12:00〜 昼食
  • 13:00、14:00~ レクリエーションや自由時間
  • 15:00〜 送迎

創作活動、ボランティア、レクリエーションの例

創作活動

折り紙や生け花、書道、ビーズ手芸、折り紙、塗り絵、絵画、染め物など。利用者の能力に応じてグループで分担して作業をおこない1つの作品を仕上げることで達成感を感じたり、能力の向上を図ることを目的としています。
作った作品は施設内で展示したり、自宅に持ち帰って飾っていただいたりすることもあります。

ボランティア

地域でおこなわれるイベントの手伝い、公園でのごみ拾いや清掃活動など。利用者が可能な範囲内でできることをおこなっていこうという活動です。強制的に参加するものではなく、あくまでも利用者が希望の場合のみ参加する形がとられます。社会のために良いことをおこなうことで利用者自身の成長にもつながります。

レクリエーション

体を動かして簡単なゲームをしたり、クイズやビンゴ、カラオケなど娯楽を楽しんだり事業所によって幅広い活動がされています。利用者同士でのコミュニケーションを図る目的でおこなわれることもあります。もちろん事業所によっては内容は異なりますが、利用者の気分転換ができるように工夫して計画されます。
あくまでも強制参加ではなく、希望があった場合のみ参加することもできますので無理に参加する必要はありません。能力を向上させたり何か目的を持ってというよりは、単純に楽しみましょうという意図でおこなわれることが多いです。

生活介護の対象者

生活介護の対象者は、厚生労働省が指定している対象者へ該当している必要があります。
基本的な考え方としては、「50歳未満は障害支援区分が区分3以上」、「50歳以上は障害支援区分が区分2以上」という条件があります。
その条件をクリアしたうえで、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案を作成する手続きを終えて必要性が認められる必要があります。
障害支援区分については、お住いの地域の市町村で認定を受けて決められるものとなります。

厚生労働省が指定する対象者

(1) 障害支援区分が区分3(障害者支援施設等に入所する場合は区分4)以上
(2) 年齢が50歳以上の場合は、障害支援区分が区分2(障害者支援施設等に入所する場合は区分3)以上
(3) 生活介護と施設入所支援との利用の組合わせを希望する者であって、障害支援区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い者で、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案を作成する手続を経た上で、市町村により利用の組合わせの必要性が認められた者
[1] 障害者自立支援法の施行時の身体・知的の旧法施設(通所施設も含む。)の利用者(特定旧法受給者)
[2] 法施行後に旧法施設に入所し、継続して入所している者
[3] 平成24年4月の改正児童福祉法の施行の際に障害児施設(指定医療機関を含む)に入所している者
[4] 新規の入所希望者(障害支援区分1以上の者)

(引用元:障害福祉サービスについて

生活介護の利用方法や必要な手続き

生活介護の利用に際しては、必要な手続きを踏まなければいけません。
手続きは細かく、サービス開始までには時間がかかりますが、大きく分けて4段階の手順をクリアしなければいけませんが、基本的には市町村の指示に沿って処理していけば難しい要素はありませんので大丈夫です。
生活介護の手続きに入る前にはご家庭内で話し合い、本人ともしっかり同意のもと手続きに入るようにしましょう。
ただし、複数回、市町村の担当者とやりとりが発生するケースが大半ですので、1日2日ですぐに認定を受けられるものではありませんので注意しておきましょう。

  1. お住まいの市町村の窓口に申請し、障害支援区分の認定を受けます。
  2. 認定を受けた後に「サービス等利用計画案」を指定特定相談支援事業者で作成し市町村へ提出します。
  3. 市町村は、計画案や勘案すべき事項をふまえてサービス量など支給を決定します。
  4. 「指定特定相談支援事業者」はサービス担当者会議を開催。サービス事業者等との連絡調整を行い、担当する事業者等の記載された「サービス等利用計画」を作成し、サービスが開始されます。

障害支援区分の認定には調査があり、本人やご家族からの聞き取りや約80項目の基本調査、自宅への訪問もあります。ここでおこなわれた調査によって市町村はコンピューターによる判定や審査会によって支援区分の判定をおこないます。
判定後には、サービス利用の意向調査や生活の悩みなどヒアリングや相談ができるようになりますので、現状や将来的な悩みなどできる限り担当者とコミュニケーションをとっておくと安心でしょう。
また、18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は児童を監護する保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた自己負担の上限月額があります。食費などの実費負担がかかるケースもありますので、利用に際して最終的にいくらお金がかかるのかは必ず確認するようにしましょう。

まとめ

生活介護のサービスについて紹介しました。生活介護は、障害者総合支援法に基づいていて、サービスを受けることによって、本人やご家族の日常的な負担を軽減してくれるものです。
事業所によってサービス内容は異なるものの、本人の意向に沿って趣味や創作活動、ボランティア活動をおこなうなど、前向きに豊かな生活を提供してくれる場でもあります。
利用開始までの手続きは確認事項が多くサービスを受けられるまでに多少のハードルはありますが、市町村の窓口へ相談をして1つ1つ処理を進められるので難しく考える必要はありません。
生活を送るうえで日常的な介護を受けられるだけでなくプラスアルファ、「利用者の自立促進、生活面での改善、身体機能の維持向上」といったメリットも大きいのが生活介護の特徴です。

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